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2010年07月 アーカイブ

ロックンロールの名付け親 8

余談になりますが、ロックンロールの爆発と密接な関わりをもつ映画『暴力教室』の原作となった小説を書いたエヴァン・ハンターの著書に『黄金の街』というのがあります。

主人公はニューヨークに暮らす盲目のイタリア系少年。

ジャズ・ピアニストを目指して、40年代の半ば、ジャズの"黄金のストリート"として知られるニューヨーク52丁目のクラブへと赴き、野望に燃えながら他のミュージシャンと初セッションを行なうというシーンがありました。

少年が抜群のテクニックを駆使して、左手による強烈なべース・ランニングを伴ったブギウギ・ピアノを得意げに聞かせた直後、共演したプレイヤーたちは苦笑いを浮かべながらこう言います。

「坊や、もう世界は変わったのさ。今じゃそんな左手のプレイをしてるやつはダサイんだぜ。バド・パウエルを聞きな」

記憶があいまいで、一字一句この通りではないですが、だいたいそんな趣旨の言葉でした。

とても印象的なシーンだったので覚えています。

ロックンロールの名付け親 9

踊るためのブギウギ・ピアノが時代遅れとなり、新しいジャズμビ・パップの時代が到来するとともに、バンドの中からステディなビートを刻む楽器が姿を消しました。

ビートをキープしているのは、シンバルを軽く叩きつづけるドラマーの左手のみ。

それまでは確実に一小節に四つのビートを打ち出していたべース・ドラムなど、時折、ソロ楽器に呼応してアクセント的に叩かれるだけだったし、豊かな低音部を補強していたピアニストの左手も、もはや着実なべース・ランニングを聞かせることはなくなっていました。

しかし、誰もが身体で音楽を聞くことを忘れたわけじゃなかったんです。

ミュージシャンたちが高度な欲求を満たすためどんどん頭でっかちになっていく一方で、頭でではなく、あくまでも身体で音楽を聞きたい、ビートを感じたいと願う若者たちは当然欲求不満を覚えていました。

もちろん同時に、アメリカの中にはまだまだビートを忘れることのない、よりプリミティヴなダンスこミュージックが根強く生きつづけていました。

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